体を動かすことだけが練習じゃない

2015年12月16日

小笠原さんのブログでコーナリング学なる記事が掲載されていた。どうすれば自転車のコーナリングが上手くできるようになるかという話だ。要約するとPCDAサイクルが重要だよ、と書いてある。

PCDAサイクル

私がコーナリングで気を付けていることをPCDAサイクル的に書くと、以下のようになる。

  1. Plan   (計画): どのようにコーナーを曲がるか計画する。進入速度、進入角度、ブレーキングのタイミング、ブレーキングの強さ、重心の位置、路面を含む周囲の状況、道路勾配、風向きなどの天候、タイヤの摩耗状況、自転車の強度、自分の体調などを考慮する。
  2. Do     (実行):コーナーを実際に曲がる。
  3. Check(評価):コーナーを上手く曲がれたか評価する。コーナー進入から脱出までのタイム、速度、自分のイメージしたラインと実際のラインが一致しているかなど。
  4. Act    (改善):評価の結果をもとに改善する。もっとブレーキングを遅くする、ブレーキングを強くする、より内側のラインを攻めるなど。

計画の段階ですでに11個も要素が列挙されている。まだあるかもしれない。これらの要素を素早く感知し、処理し、判断を下す。コーナーを速く曲がるということは、肉体だけでなく脳みそも疲れる作業なのだ。

落車しないために

コーナーで落車しないためのポイントは、「だろう運転」はしない、過信しない、安全係数を大きめにとることだ。

自動車教習所でも習うことだが、「かもしれない運転」が身を守る。ブラインドコーナーの先には車がいないだろうと思って突っ込んだ結果、交通事故を起こすことがある。常に「車がいるかもしれない」という心がけが大事だ。

過信は「だろう運転」につながる。例えば、新品のタイヤだから多少無理をしても大丈夫だろう、という感じだ。新品のタイヤでも、路面状況が悪ければスリップすることは十分にあり得る。1つだけの要素だけで評価せず、常に要素を組み合わせて複合的に考える癖をつけるべきだ。

安全係数を大きめにとるというのは、小笠原さんのブログでの「いつでも7~8割のコーナリングができる」こととほぼ同義だ。これくらいの速度なら突っ込めるけど少しスピードを緩めて侵入しよう、という感じ。一気に限界まで引き上げると事故の原因となる。ちょっとずつ慎重に自分の可能性を広げていくようにしたい。

評価する基準を学ぶ

問題は、どう評価するか、だ。評価するためには、何かしらの基準が必要である。おそらくほとんどの人は、自分の経験だけで評価しているのではないか。

小笠原さんのブログでは、「自分であれこれ試して(PCDAサイクルを回して)上手くなってね!」としか書いてない。この方法は全く正しいのだが、本当にそれだけでいいのか?

私がおすすめするのは、自分や他人がどのようにコーナリングしているか観察することである。

  1. 自分のコーナリングを写真や動画に撮ってもらう。他人からアドバイスを受ける。
  2. プロのサイクルロードレースを見て観察する。
  3. モーターバイクのレース(MotoGPなど)を見て観察する。
ライセンス: CC0 Public Domainです。

特に3をおすすめする。自転車とバイクは、機材の重量や走るコースのスケール感が違うものの、コーナリング原理は全く一緒である。MotoGPは20人ほど出走するが、すべてのライダーが常に限界ぎりぎりで走っている。プロのサイクルロードレースも参考にはなるが、正直100人以上走っていれば下手な人も交じっている。全員が全員上手いわけではない。さらに、サイクルロードレースラインレースが多いのでこのコーナーは一度きりという場合が多い。対するMotoGPはサーキットを走るので、同じコーナーを何回も曲がる。このライダーはなぜ速いのか、このライダーはなぜ転倒したのかを同じコーナーで何回も観察できるのは大きい。ちなみに、MotoGPの下位カテゴリーであるMoto2、Moto3はさらにバイク重量が軽いので参考になる。

まとめ

PCDAサイクルを回してコーナーに対する理解を深めよう。自分の体を動かして得られた経験だけでなく、観察によって得られるものは大きい。皆さんもMotoGPを観戦してはいかが? 日本では日テレG+が放送している(CSなので有料だが……)。